"履き手との対話" それはビスポークを起源とする大塚製靴の靴作りの原点とも言えるものです。bespoke(話しながら)という言葉どおり、かつて靴作りは履き手と作り手が対話しながらお互いの求めている形を作り上げていくものでした。そして、出来上がった靴は履き手の足を優しく包み込んでいつも身近で支えてくれる、靴作りに携わる者としてそうした場面に立ち会えることは何にも勝る喜びです。

ビスポークというのは値段も高く、誰でも気軽にという訳にはいきません。それでも、一人でも多くの人に自分に合った靴を履いて欲しい、そういった想いが作り手の間では脈々と受け継がれてきました。今回登場する「Otsuka made」はそんな想いが受け継がれてきた大塚製靴の自社工場から生まれました。

一人でも多くの人が気軽に選べる最初のオーツカメイド。そんなコンセプトで生まれたシリーズは、140年を越える蓄積をベースとして現代の技術で表現しました。靴作りのエッセンスであるラストを最大限に活かして生まれた構造は、靴の本来持つ役割である足を包み込むことに特化したシリーズになっています。


今回、Otsuka madeのために3本のラストを新しく削り出しました。 フィッティングの要となるラスト製作、140年以上にわたり日本人の足型に最適な靴作りを模索してきた大塚製靴ではラストはその道一筋の専門の職人が担当します。それは、熟練の勘が必要とされるだけではなく、その技術や勘を代々継承していくため。ラストを外注するメーカーが多い中で自社の専任職人を持つこと、靴作りにとって本当に大事なことは何か、それを知っているからこそのこだわりです。

今回のラストの最大の特徴は人間の足の裏にあたるラストの底面まで忠実に再現したこと。本当の意味で足を包み込み、支えるバランスを作り出すために、そのままの形にすること、それが履き良さを求めた末の一つの答えです。


立体型内底を採用した今回のシリーズ、履き始めから抜群のフィット感を体感できるだけでなく、踵の方を少し高くして底面に傾斜をつけることで歩き出す時の踏み出しがスムーズになるように設計されています。履いた瞬間からサポートしてくれる即戦力な仕様になっています。

また内底を立体にすることで生まれる隙間をコルクで埋めることで、履き込むうちに自然に一人一人の足の形に沈み込み、最後の微妙なフィッティングも可能にしました。「すぐに履ける使いやすさ」と「履き慣らす楽しさ」を両立させた一足です。