それは100年後のクラシック

規律の中の無秩序
あらかじめ決められた旋律の中で、その場の雰囲気に合わせたアドリブを利かせて、演奏者の感じたままの自由な表現を取り入れたジャズ。

はたまた通常では組み合わすことのない楽器同士のセッション。それらには厳格な規律の中で、それぞれのパートが決められた 役割を完璧に果たすことによって、壮大な音楽を紡ぎだすクラシックとはまた異なった魅力を持っている。

ただの無秩序ではなく、ある秩序の中で敢えて一つ外すことによって今までにない魅力を引き出しているのである。

一色が生み出す世界
ほんの一つ楽器を混ぜる、ほんの一つ音を外す、それだけでそれまでとは全く異なった表情が現れる。靴であれば、 少し今までと違う色を纏うことで、今まで見えなかった顔を照らし出してくれることがあるのではないだろうか。

深みのある青を纏った一足。OTSUKA M-5オリジナルカラーであるロイヤルブルーの革靴。そのデザインは100年以上も昔に形作られたドレス靴。 ソールはエレガントに見せるためのヤハズ仕上げと独自の三つハトメ、そこには歴史を感じさせる風格がある。しかしそんな クラシックの靴もいつも通りのブラックではなく、一味変えたロイヤルブルーを一塗りすることで、そこには今までに見たことのない表情が生まれる。

エレガントを求めたソールは、アッパーとの濃淡により、より一層シャープな表現に生まれ変わり、歴史を感じさせた 三つハトメは一転モダンな表情を醸し出す。ほんの一つ変えることで、無限の広がりを見せるのである。

クラシックの原点
型あってこその型破り。ただ単に奇抜さを狙えば良いという訳ではない。基本を忠実に身につけ、 感覚を養っていたからこそ、出来上がる作品。

そもそもクラシック音楽の大家には即興音楽を得意とした人が多い。もともと偉大な音楽というのは、 パトロンに雇われた音楽家が、その場で最高の音楽を生み出すという緊張の中で生まれたものであることが多い。

そう考えると、自分の足元を飾る、他に誰も履いていないこの靴が、いつの日かクラシックと呼ばれる日がくるのかも知れない。
青色に染められた革というのは、珍しく感じる人が多いだろう。そもそも青の染料が安定的に供給されるようになってから、 まだ半世紀も経過していないのだから、それも当然と言えるかもしれない。

鮮やかな青が一般的に使われてきた歴史は浅い。それまで、自然界の中にほんの僅かに存在する植物や鉱物から 採り出した色素を使用していたため、長い間、希少な色として存在してきた。

イギリス王室の伝統色ロイヤルブルー、時代を越えて多くの人々を惹きつけてきたウルトラマリンブルー。 それらは高貴な身分や、特別なときにしか許されない色であった。

伝統を受け継ぎつつ、新しい時代を切り拓く。特別な色として、長い歴史を歩んできた青こそ、相応しい色なのかもしれない。

大塚製靴の歴史 鹿鳴館の時代、“靴師”と名乗った日本人がいた。
名は大塚岩次郎―

明治維新という既存の価値観の崩壊に遭遇し、西洋文化を
ただ表面的に受け入れていく時代の中で、「日本人のための
靴を」という信念を以って和魂洋才― “日本人としての精神を
堅持しつつ、西洋の学問・知識を受け入れること” を実践した。

明治25年には万国博覧会にて金牌を受賞 ―
創業からわずか20年で世界の一流シューメーカーに肩を並べ、
世界博覧会での金牌受賞といった形で証明
されたその技術は、粛々と後世の職人に伝承されてきた。

時は流れ、創業から140年経った今、一つの自負がある。
革靴の起源は確かに欧州にある。しかし、履き良さにこだわり、
“日本人のため”を求め、日本人の足型を見つめ続けてきた
歴史は他の追随を許さない。

大塚製靴の果たすべき使命、それは培われてきた技術と伝統、
そして、“日本人のための”一足を後世まで伝え続けること。

伝統とは単に古いということではない。
―OTSUKA M-5 Online はその証明である。




  ■Last(靴型):B-715
■Width(足幅):EE
■製法:グッドイヤーウェルト製法

■素材
 甲革:カーフレザー
 腰裏ライニング:牛革

■ハナ止め:シャコ止め(手縫い)
■口周り:切放玉縁
■底仕上げ:半カラス
■コバ仕上げ:ヤハズコバ
■ウェルト面仕上げ:糸出し
■シャンク:布巻きスチールシャンク
■中物:天然ウールフェルト(刃入り)
■踵形状:ピッチドヒール