全霊を捧げるという覚悟、失うことを恐れない勇気

決意を貫くということ
何かを成し遂げることを決意し、それに向かって情熱を傾け続けている人には、一目でそれと分かるオーラが感じられる。

本人以外の人は、そのエネルギーがどこから涌いてくるのか分からずに「なぜ?」と問うけれども、 本人はそんな事などどこ吹く風で「自分がそうと決めたのだから、やり遂げるまでだ」と嘯く。

決意したことを貫くことは、時として苦痛や辛い思いを伴うに違いない。けれども、その道を歩む人は例外なく充実感に満ちていて、 何より自己の感情に対して正直だ。その人は本当の喜怒哀楽を享受している。

覚悟とは、“信念を貫くという決意”に違いない。そして真に純粋な喜びや悲しみ、悲しみや楽しみは、 そういう人だけが味わえる特権ではないか。そして必要なものは勇気。須く全ての人に備わっている。

飾りを省き、名誉を表す
かつて大塚は陸軍省・海軍省に軍靴を供給していた。
自分の人生を国に懸けた者たちのための靴を製造していたのだ。

名誉のために生きた彼らの生き方は、何も犠牲にせずともそれなりの満足が得られる現代においては理解する事は 難しいのかもしれない。けれども、何かを成し遂げるという並々ならない決意を持った人を見ていると、そんなかつての英雄たちを彷彿とさせるのだ。

この靴は、かつて陸軍将校のために作られた靴を原型としてデザインされた。余計な飾りは一切省いたホールカットの中に、 唯一勲章としてのスキンステッチが入ったデザインは、かつての英雄へのオマージュが込められている。

この靴は、覚悟を持って履いて欲しい。
決して誰にでも履ける靴を作ったつもりはない。


大塚製靴の歴史 鹿鳴館の時代、“靴師”と名乗った日本人がいた。
名は大塚岩次郎―

明治維新という既存の価値観の崩壊に遭遇し、西洋文化を
ただ表面的に受け入れていく時代の中で、「日本人のための
靴を」という信念を以って和魂洋才― “日本人としての精神を
堅持しつつ、西洋の学問・知識を受け入れること” を実践した。

明治25年には万国博覧会にて金牌を受賞 ―
創業からわずか20年で世界の一流シューメーカーに肩を並べ、
世界博覧会での金牌受賞といった形で証明
されたその技術は、粛々と後世の職人に伝承されてきた。

時は流れ、創業から140年経った今、一つの自負がある。
革靴の起源は確かに欧州にある。しかし、履き良さにこだわり、
“日本人のため”を求め、日本人の足型を見つめ続けてきた
歴史は他の追随を許さない。

大塚製靴の果たすべき使命、それは培われてきた技術と伝統、
そして、“日本人のための”一足を後世まで伝え続けること。

伝統とは単に古いということではない。
―OTSUKA M-5 Online はその証明である。



カラーラインナップ:ブラック、ブラウン


意匠の起源:陸軍に納めた軍靴
かつて陸軍のために作られた靴は、実物が今も大塚製靴に保管されている。軍靴としてデザインされたにも関わらず、その姿は威厳と共に品格すら感じさせる。

仕立てやすいようにと考えられたかつてのパターンを現代流にアレンジするにあたり、手縫いのスキンステッチ、ワンピースのアッパーという敢えて贅沢なスペックでの再現を試みた。

かつての英雄の足元を飾った靴を、最上級のドレスシューズとして復活させた。この靴の背景に存在するルーツは、まさに履き手の覚悟を試している。

※写真は明治初期(1880年頃)陸軍に納められていた靴


カラーラインナップ:ブラック、ブラウン

シャドーアンティーク仕上げ この靴の色はナチュラルカラーの革を使って作られ、靴の形になった後で色づけされている。この色づけ方法によって、元々染色されている革にはない透明感と、自然なムラ感が表現できる。

ナチュラルカラーの革は最もシビアな検閲を通った最上級の革しか使用できない。なぜなら、濃い色で染色していない分、革の元々あった血管の跡(血筋)た傷などの粗が目立つからだ。最上級の革を贅沢に使うことで初めて可能な仕上げである。
そしてその色づけは、手によって施される。
革の状態で染めあげた革は、確かにムラがなく均一に染められ美しい。けれどもあえて手の仕事を一工程加えてまで手染めにこだわるのには理由がある。

ナチュラルカラーの靴にオイルを何層にも重ねていくことで、均一に染められた革にはない立体感のある色彩が表れる。同じものが一つとしてない色彩は、靴というプロダクトの意味を、ただの履き物ではなく一種の芸術品の域にまで高める。

そして革の状態で色づけするのではなく、木型に釣り込み靴の形となった状態で手染めしていくのにも意味がある。ムラは決してランダムに表れているのではなく、流れるように美しい方向性を持ったものとして革の表面に表れる。水彩画の色の中に筆の跡が感じられるように、手染めによって色づけされた靴の表面にはその流れるような仕事の跡がはっきりと残る。
靴が成形されてから色をのせていくという順序でなくてはいけないのは、その流れるようなムラ感の美しさにこだわるためだ。靴のアッパー(甲の部分)に用いられる革は、木型にあわせて釣り込む(靴の形に成形する)工程で強くひっぱられ伸ばされる。その伸び方は場所によって様々だ。

つまり、平面の状態でいくら美しい流線のムラ感を表現しても、靴の形となった時にその美しさがそのまま保たれる可能性は皆無だ。だからこそ、“靴が成形されてから色づけをする”という順番でなくてはならない。この靴の美しさを表現するためならば、その工程にどれ程こだわっても、こだわりすぎということはない。

スキンステッチ
一枚の革から作られるワンピースのアッパーに、唯一ある飾りが両サイドに入ったスキンステッチだ。縫い糸は革を貫通せずに、内部を通って再び表面に現れる。当然、機械ではこのようなステッチを再現することはできない。手縫いの技術をもって初めて表現できるステッチである。

アッパーには、このスキンステッチ以外には飾りはなく、3アイレットのレース部分も含めて至極シンプルだ。望むもの以外の余計な物は必要としない精神性を具現化したデザインは、実際にかつて陸軍将校のために作られた誂え靴である。

復刻した現代において、この潔さは逆に新鮮だ。個性を求める あまりデコラティブになりがちな短絡的な発想を、これ以上 無い
説得力を持って覆してくれる。

出し縫い、シャコ留め、半二重
だし縫いのピッチは、3センチの中に約12針。
英国の著名なグッドイヤーウェルト製法の靴を見ても、既成靴としてこれ以上の細かい縫い目を実現している靴はまずない。だし縫いで最も難しいとされる爪先のカーブに沿う部分の縫い目においても等間隔に保たれている。ピッチを細くすればするほど、またカーブの半径が小さくなり曲がり方が急になればなるほど、曲線でもミシン運びは困難になる。確かな技術のみが可能にする仕上げである。

コバは、角ばった角を削り丸みを出す面取りと呼ばれる仕上げを行い、その上に目付け(エッジの溝)を施した。このだし縫いから始まる詳細な仕上げが、靴全体が持つシルエットの美しさを、先端まで完璧に作り上げている。
ハナ留め(羽根の付け根の補強)は、“シャコ止め”と呼ばれる手で編んだ糸を縫いつける手法によって施されている。靴を着脱して羽根が開閉する際に、最も負担のかかる部分だが、単に強く縫い付けただけでは革自体を傷めてしまう可能性がある。そこを機械でなく、手で縫いつけることによって、手縫いならではの遊びが生まれ、強過ぎず、弱過ぎず絶妙な力加減で留めることができる。しかし、こうした技術をしっかりと受け継いでいる職人は数少ない。

またこの部分の補強は、雑になると必要以上の面積を要し、エレガントさを損なう。必要最小限の面積の中で確実な補強を実現するためにも、手縫いの技術が必要とされるのである。
そして大塚製靴の靴の最大の特徴は、半二重と呼ばれるステッチが施されている点だ。踵部分にステッチを二重に施し補強することで、履き口の傷みを最小限に抑えている。

さらに、このステッチは縫割(ライニングの縫い合わせ部分)まで伸びており、ほつれを防ぐ役割も負っている。欧米人と異なり、靴を着脱することの多い日本人にとって、履き口が強固であることは何よりも重視されてきた。明治時代より大塚製靴が信念としてきた“日本人のための靴作り”の表れでもある。

矢筈(ヤハズ)仕上げ
靴にとって踵は生命線とも言える。履き心地、見た目、全てにおいて踵が担う役割は大きい。市革(踵部分に補強の目的で取り付けられる革)のデザインは、大塚製靴に古くから伝わる2枚の革を組み合わせたものだ。

通常は一枚の革で、踵の縫割(縫い合わせ部分)の上方のみに取り付けられていることが多い。この靴は、踵の縫割を全て覆うように取り付けられている。
本底のエッジは、矢筈と呼ばれる仕上げが施されている。矢筈とは矢の一端の弦にかける部分のことであるが、その形と同じように本底のエッジを三角形の尖った形に落として仕上げることを矢筈仕上げと呼ぶ。この仕上げによって、厚みのあるソールを華奢でエレガントに見せることが出来る。元々日本が発祥の技術と言われている。

良く見かけるのは単純にくの字にエッジを落としただけの仕上げだが、これは本来の矢筈仕上げではない。この靴の仕上げでは緩い曲線を描くように削られており、先端の角度を鋭角にする事でよりエレガントに見えるよう配慮されている。

ピッチドヒール、ヒドゥンチャネル
ヒールは、接地面に向かって断面積が小さくなるピッチドヒールの形状をとっている。華奢なシルエットは、どこまでもエレガントでドレッシーだ。かつて鹿鳴館に集った紳士淑女よろしく、見られる事を前提としたこの仕上げは、人の目に晒されることで初めてその意味をなし、他との差を浮き彫りにする。

そしてそれは必ずしも必要以上に自己主張しない。見る人が見れば気付く、その駆け引きもまたかつて紳士と呼ばれた人たちの楽しみであった。
ソールの仕上げは、半カラス(土踏まずの部分に黒く着色する仕上げ)が施されている。本底は周辺に溝を起こし、その部分を底縫いの糸が通り、縫い終わるとそれをかぶせて縫い目を隠す、ヒドゥン・チャンネルと呼ばれる方法で取り付けられる。これは底面を美しく見せるための手法であるが、さらに焼き鏝で化粧を施すことによって、溝を起こしたわずかな跡も目立たないようにする仕上げがあるが、この靴には焼き鏝による仕上げは施されていない。なぜか?

ヤハズ仕上げによって、その跡がすでに削り取られているからだ。ソールにこれほどのエレガントを感じる靴は他にない。






  ■Last(靴型):B-715
■Width(足幅):EE
■製法:グッドイヤーウェルト製法

■素材
甲革:カーフレザー
腰裏ライニング:牛革

■ハナ止め:シャコ止め(手縫い)
■口周り:切放玉縁
■底仕上げ:半カラス
■コバ仕上げ:ヤハズコバ
■ウェルト面仕上げ:糸出し
■シャンク:布巻きスチールシャンク
■中物:天然ウールフェルト(刃入り)
■踵形状:ピッチドヒール


こちらの商品は非常に難しい技術を必要とする工程を経てお作りしておりますため、専門の職人を手配してお仕立てしており、
ご注文頂いた方の分のみを製作させて頂いております。そのため、一度にあまり多くのオーダーを承ることができません。

今回、楽天市場の世界の高級商材に焦点を当てた特集に、OTSUKA M-5の商品が取材および紹介され、それ以来、多数の
お問い合わせを頂きました。
できる限り多くのお客様のご要望にお応えできるよう、素材と職人の手配を進めてきましたが、
限られた数でのご紹介になること、予めご了承くださいませ。

今回は
【足数限定】でオーダーを承ります。(サイズ・カラーの別に関わらず、合計受付数に達した時点で、受付を終了致します。)

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オーダーを受けてからお客様一人一人のために靴をお仕立て致しますので、ご注文後、靴が足に合わない等お客様都合での
キャンセル・返品はご遠慮頂いております。何卒ご了承下さいます様お願い申し上げます。

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