一度足を入れた靴は、その人の歩き方、足と靴の相性によって様々に形を変える。それを繰り返すうちに、やがてその人に合った一足へと育ってゆく。靴とは、購入した時点ではまだ半製品に過ぎないのだ。

しかし、ただ使い込めばよいと言うものではない。きちんとした手入れをして、まさに「育てる」のである。

革靴を履く愉しみとは、つまりそういう事だ。自分だけの一足に育て上げてゆく過程。足を入れるごとに、自分の足に馴染んでくるのを感じ、自分だけが理解できる価値観が生まれる。「育てる」ことが出来る人だけが感じる至福の瞬間である。

しかし当然ながら、ただ履き込むだけで育つわけではない。「育てる」という言葉が示すとおり、靴を成長させるために十分な手間をかけてやらなければなら
ない。

その中で最も基本的なことの一つが、着用後の靴をどのように扱うか、という事である。



人が歩くのに合わせて、靴に使われている革には色々な方向から負荷がかかる。その結果、分かりやすいところではアッパー(甲の部分)に履きジワが生じる。着用後、靴の革は本来の形に戻ろうとして伸縮するが、甲の革と底の革、さらには同じ革でも繊維の方向によって伸縮の程度が異なるため、次第に本来あるべき形状が崩れていく。

例えば爪先が必要以上に反り上がってしまったり、甲のシワが深く刻まれ悲惨な姿になってしまった靴を履いているのをよく見かける事がある。

また、足がかいた汗は革の劣化やカビの原因にもなる。

着用後の靴が、そうして意図していない変化をしてしまうのを防ぐためのツール、それがシューツリーなのだ。

シューツリーとは、足を入れていない時に靴の中に入れて、靴を本来あるべき姿に保つための道具である。

けれども 、どんなシューツリーでも良いというわけではない。不特定多数の形状の靴に使われることを想定している既成のシューツリーは、様々な形状に対応するためバネを使っていることが多い。しかし 、バネの力によって革に必要以上の負荷がかかり、逆に形を崩してしまうことがある。また、プラスチック製のものでは、十分な吸湿性を得ることが出来ない。

それでは、最良のシューツリーとはどのようなものか?その答えは、靴の形を成形する時に使った靴型そのものである。

今回“M-5 シリーズ”の靴を作るにあたり、その靴型の形状
そのもののシューツリーを作成した。靴型を作るのと全く同じ工程を経て作成した後、職人の手によって微妙な調整が加えられ3つのピースに分割される。出来上がるのに約1ヶ月を要するこのシューツリーは、“M-5 シリーズ”の靴型を使った靴のためだけに作られるものである。「この靴は、手間をかけて“育てる”に値する靴である」という誇りでもある。





(1)

まず爪先側のブロック(一番大きいブロック)を靴の爪先奥まで押し込み、次に踵側のブロック(丸みのあるブロック)を、滑らかになっている方を踵に合わせて靴に入れる。

爪先側のブロックに通してある紐は、このブロックを抜き出すときに必要となるので、必ず靴の外側に出しておかなければいけない。靴の内側に入れてしまったりブロックから抜けてしまったりすると、後で爪先部側のブロックが抜けなくなることもあるので、注意して頂きたい。

(2)

次に、真ん中のブロック(持ち手のついているもの)を、既に入れてあるブロックの間に押し込む。

ブロックは“く”の字にカットしてあるので、それに合わせて押し込むことで位置が固定される。

(3)

最後に、外側に出してある紐を持ち手に掛け、結んでまとめておく。紐の先端には、ナチュラルカラーの革を使った、タッセル(飾り)を取り付けた。

履かない時は一つのオブジェとなる靴だからこそ、その姿にはこだわりたい。









  ■Last(靴型)
 :B-715
 :B-815
 :B-1000


■Width(足幅)
 :EE(B-715)
 :EE(B-815)
 :EE(B-1000)


こちらの商品は専門の職人に依頼し仕上げているため、ご注文頂いた方の分のみを製作させて頂いております。そのため、ご注文頂いてから約1ヶ月後のお届けを目安にして頂ければと思います。

また月間に製作できる個数が限られておりますため、多くのご注文を頂きました場合には更に若干のお時間を頂くことも御座います。その場合には、先にご注文頂いたお客様の分より順次お作りしていきますので、予めご了承下さいます様お願い申し上げます。

■ご注意■
※オーダーを受けてからお客様一人一人のためにシューツリーを削って参りますので、ご注文後、お客様都合でのキャンセル・返品はご遠慮頂いております。何卒ご了承下さいます様お願い申し上げます。

※他の商品を同じ買い物カゴに入れられた場合、お届け時期の遅い商品に合わせての発送になります。お届け時期の違う商品はできるだけ同じ買い物カゴにお入れにならないようにお願いいたします。