カジュアルな雰囲気を持つややふっくらとしたトゥのフォルムにも関わらず、野暮ったくならないのは、ドレスシューズに基礎を置くラストのモデリングによる。

ボール(足の指の付け根)部分をホールドし、足の指が自由に動く。そして土踏まずへと絞り込まれていくラインは、“ファッションとファンクションの両立”という大塚の靴作りの基本にのっとっているからこそ美しい。

金属製8アイレットの編み上げを採用しているため、甲部分のフィッティングに関してはかなり柔軟に対応できる。結び方はオーバーラップ(左右の紐を交差させ、上からアイレットに通していく)を用いれば、緩みにくく長時間の歩行にも適している。

ライニングにはドレスシューズと同じく牛ヌメ革を使用ている。植物性のタンニンでなめされたインナー専用の柔らかい革を使用することで、アッパーの補強のみでなく足の保護にも適したインナーとなっている。

ウイングのように途中で一度屈折するアッパーのステッチデザインによって、カジュアルな中にそこはかとなくエレガントさが醸し出される。

アッパーに用いているフレンチカーフは
、スニーカーにも関わらず履くほどにしなやかに美しくなっていくエイジングも魅力である。


土踏まず部分のシェイプはカジュアルシューズながらしっかりと絞りこまれており、ヒール‐土踏まず‐ボール部分(足の指の付け根の部分)でホールドするフィッティングを踏襲している。

中物には練りコルクを使用し、履きこむほどインソールが沈み履き主の足に馴染む。

ライニング(腰裏)の縫い合わせ部分は、“箱縫い”という手法によってまとめられている。通常ライニングのまとめは、縫い目が履き口にまで抜けるように一重で縫われていることが多い。箱縫いは、一旦履き口付近まで縫製したあと、ミシンの角度を変え箱型を描いて再びソール方向へ縫い目を戻す。

これによって、ライニングの縫い合わせ部分が履き口側からほつれることがなくなっている。靴の着脱が多く履き口周辺に付加のかかりやすい日本人の特徴を考えてのことと言える。

そしてだし縫いがヒールの周りまでぐるっと掛けられているのがご覧頂けるだろうか。この360度グッドイヤーウェルトとダブルステッチによって、堅牢かつカジュアルな雰囲気が感じられるカウンター部分。単なるカジュアルではなく、“紳士靴メーカーが作るカジュアル”としての「らしさ」は、曲線の多い分難しくなるステッチワークにも表れている。


カウンター部分は、縫い割り(表と表を合わせて縫い、それを開くことで縫い目を内側に隠す方法)が入っており、3つのパーツから構成されています。この部分のステッチワークは、明治時代に発行された大塚のカタログにも見られる伝統の意匠だ。

本底にはクレープソールを用いているためソールの返りが非常に良い。フランスでなめした最高級の皮革を使用した柔らかいアッパー、適度なトゥ・スプリング(負荷を掛けない常態で爪先が持ち上がっている角度)と併せて“快適な歩行”を実現している。

本底自体が弾力性を持つので、足が接地する際の衝撃についてもある程度を緩和するため、長時間歩いても疲れにくいという利点がある。











 


■Last(靴型):OK-511

■Width(足幅):EEE

■製法:グッドイヤーウェルト製法

■素材

 甲革:French Combination Tanned Calf

 ライニング:牛タンニンヌメ

■コバ仕上げ:平コバ

■ウェルト面仕上げ:糸だし

■シャンク:布巻きスチールシャンク

■中物:練りコルク